一晩上田市内で泊まってみた、盆地の朝は幾分涼しく感じられた。窓の外を見やると一面に菅平の山なみが眼前に雄大に広がっている。尾張平野に育った私にはそれは全く新鮮に映るのであった。幸いと昨日に続き雲ひとつない晴天である。ホテル下の上田駅からは長野新幹線が純白の車体を光らせて走っていくのが見える。
岡部さんとの約束の時間にはまだ少々あったので市内をぶらりと歩いてみることにした。こうした時間は旅を感じさせるに充分である。悲しいことに、地方の駅といえども現在の駅舎はコンクリートの塊で駅前は必ずといっていいほどロータリーという殺風景なつくりもので色気も素っ気もないものとなっている。これは単なる旅人の感傷にすぎないのであろうか?
見知らぬ街をただ歩く、何もとらわれることなく歩く、民家の庭先に柘榴がたわわに実っていた。早朝、秋の空に赤い実の色はいい、こうした景色はどんな特産品より僕は好きである。
上田電鉄別所線に乗って岡部さんと待ち合わせの駅に付くと彼はもう待っていてくれた。今日も彼の運転にまかせて寺巡りである、ゆっくり塩田平へ向かうことにした。連休二日目の今日も天気がいい、昨日の大法寺住職の言っていた「この地方は雨が少ないのです」という言葉にうなづく。
塩田平の前山寺駐車場にはもうかなりの方々がみえる。このあたりはウォーキングにいいという話である。確かに年配のグループらしき方々の姿が多いようにも感じた。
黒門から入ると巨大な欅の木に驚く、参道は歩く人の心に仏心を植えつけるものでもある。前山寺は独鈷山山麓に位置する古刹で真言宗のお寺である。かつては信濃四談林といわれ、真言宗四ヶ所の勉強所にされて末寺が四十余ヶ所という格式の高い寺でもあったそうです。萱葺きの厚い屋根が暖かさを見せてどっしりと構えていました。
客殿にあがって早速名物といわれる「クルミおはぎ」を頂戴する。甘党の僕には大変ありがたいものであった。庭を通して遠くは上田の盆地が見渡せる客殿で美味しくいただいた。
寺の地図